容器試験
当センターにおいては、国際間における危険物の安全輸送のための統一基準(国連勧告)に基づく危険物容器の試験体制をいち早く整えるとともに、調査研究(危険物の個品海上輸送に関する調査研究)で得られた豊富な知識をIMDGコード(海上輸送)やICAO規則(航空輸送)に基づく性能試験や安全性評価に役立てています。
国内の陸上輸送における危険物容器はもとより、非危険物を収納する容器や電気機械の製品梱包容器についても、それぞれの基準や社内規定等に基づいて性能試験を実施し、各方面から高い評価を頂いております。
<小型容器>
1.小型容器とは
危険物輸送では容量450L以下の容器を小型容器と総称します。容器の形状、構造は様々で、ドラム、樽、ジェリカン(角形容器)、箱、袋、組合せ容器(複数の内装容器及びこれを保護する外装容器により構成される容器)など多様です。また材質も容器によって、金属(鋼、アルミ、その他)、プラスチック、木、合板、ファイバ板、紙、プラスチックフィルムなど様々です。輸送する危険物の性状に応じて、これらの組み合わせで多種多様な容器が作られています。容器は輸送する物質の危険性の程度に応じて、収納すべき容器の強度を示す指標として、高い危険性を有するものを収納する容器等級Ⅰ、中程度の危険性を有するものを収納する容器等級Ⅱ、低い危険性を有するものを収容する容器等級Ⅲに区分されます。
2.小型容器の試験
必要な試験項目には、落下試験、積み重ね試験、気密試験、水圧試験、等があります。
①落下試験
全ての容器で実施します。落下高さは容器等級で異なり、容器等級Ⅰでは1.8m、容器等級Ⅱでは1.2m、容器等級Ⅲでは0.8mです。
落下試験の方法は容器の形状によって異なり、写真の木箱の例では、5個の試験体を用いて、それぞれ異なる落下姿勢(ア.底面の対面落下、イ.天面の対面落下、ウ.側面の対面落下、エ.つま面の対面落下、オ.任意のかどの対角落下)で試験を行い、内容物が漏れ出ることがないこと、運送中の安全性に影響与えるような損傷がないことを確認します。
②積み重ね試験
容器を運送、保管する際に、何段も積み重ねることがよくありますが、その場合でも安全が確保されるよう、袋以外のすべての容器及び包装について、積み重ね試験を行います。
試験体の上面に加える試験荷重は、収納する内容物を充てんした状態の同じ容器を、高さ3メートルまで積み上げた時に受ける荷重とほぼ同等の荷重で、24時間の負荷をかけ、座屈や漏れがないことを確認します。
また液体を充てんするプラスチック製のドラム、ジェリカンなどでは、40℃以上の温度で28日間、負荷をかける必要があります。
③気密試験
液体を充てんするすべての種類の容器(組み合わせ容器を除く)について、気密試験を行います。容器等級Ⅰでは30kPa、容器等級Ⅱ及びⅢでは20kPaの空気圧力を加え、ガス漏れ検知スプレー(石鹸水)を塗布して5分間保持した後、漏えいのないことを確認します。
④水圧試験
液体を充てんする金属製又はプラスチック製の容器については、輸送時に高温にさらされて、充てんした液体の蒸気圧が上昇した場合でも十分な強度を有することを確認するため水圧試験を行います。試験圧力は、充てんする液体によって異なります。
<フレキシブルコンテナ(FIBCs)>
1.フレキシブルコンテナとは
フレキシブルコンテナとは、織布、樹脂フィルムのような柔軟な材料でできた胴部と、つり上げるためのつり部、注入・排出ができる開口部を備えたIBC容器で、土砂、飼料、穀物等の粉粒体の大量輸送や保管、貯蔵を目的としており、最大充填質量は最近では2トンを超えるものも開発されています。東日本大震災に関連して、大量の瓦礫の運搬や、東京電力福島第一原子力発電所の事故による除染作業で出た大量の残土の輸送及び保管、貯蔵にも、フレキシブルコンテナが利用されています。
2.フレキシブルコンテナの試験
非危険物用のフレキシブルコンテナでは、以下のような性能試験を行います。(JIS Z 1651)
①繰返し頂部つり上げ試験
内容物を充填したフレキシブルコンテナを、試験機のフレームにつり下げたうえで、試験機の加圧盤を介して内容物に荷重を加え、内容物の漏洩や安全を損なう異常のないことを確認します。試験荷重は、繰返し使用するタイプ(ランニング形、クロススタンダード形)のフレキシブルコンテナでは、安全使用荷重(SWL)の2倍の荷重でのつり上げを70回繰り返した後、引き続きSWLの5~8倍の荷重で1回つり上げます。また、1回(単回)使用タイプ(クロスシングル形)のフレキシブルコンテナでは、2倍の荷重でのつり上げを30回繰り返した後、引き続きSWLの5倍の荷重で1回つり上げます。
例えば、当センターで実施する事のできる最大の充填質量2,500kgでクロスシングル形を実施する場合は、5tonで30回の繰り返し試験を行い、その後12.5 tonで1回つり上げ試験を行います。
②圧縮/積み重ね試験
フレキシブルコンテナで保管、貯蔵する際には3段、4段と積み重ねることがありますが、その場合でも十分な強度があるかを確認するための試験です。4段積みを想定するフレキシブルコンテナの場合、SWL×4(段)×1.8(安全率)の荷重(2,500kgのフレキシブルコンテナでは18トン)を上面に加えて6時間圧縮し、異常のないことを確認します。
③落下衝撃試験
内容物を充填した状態で、0.8mの高さから落下しても異常のないことを確認します。
④その他
試験規格(UN規格)によっては、裂け伝播試験、引き落とし試験、引き起こし試験などを行う場合があります。
<センターの試験設備>
危険物輸送容器でも航空輸送に係るものはIATAの危険物規則、国内の陸上輸送においては、消防法に基づく「危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示」、等を満足する必要があります。また非危険物の輸送容器でも、JIS等の試験規格があります。
センターは、これら輸送容器に係る種々試験規格に対応できるよう、試験設備の充実を図るとともに、試験技術、試験品質の向上に努めてまいりました。危険物輸送容器は、地方運輸局又は国の登録検査機関である(一財)日本舶用品検定協会(HK)の検査に合格する必要がありますが、当センターは、HKから危険物輸送容器の性能試験に際し、HKの検査員の立会を免除された唯一の試験機関です。
また、IATAの「航空危険物規則書」において唯一、日本の公的な試験所と紹介されているほか、フレキシブルコンテナ工業会等からも試験機関として認められるなど、各方面から高い評価をいただいております。
【主要試験装置】
試験装置 |
主な仕様 |
落下試験装置 |
落下高さ : 4.3m(最大) 試験体の質量: 3ton(最大) |
積み重ね試験装置 |
床台 : 2,100×1,400mm 容器底面寸法: 600×600mm(3個同時) 容器の高さ : 1,000mm(最大) |
気密試験装置 |
最高試験圧力: 100kPa 吐出量 : 380 ℓ/min |
水圧試験装置 |
最高試験圧力: 600kPa 吐出量 : 7 ℓ/min |
FIBCs試験装置 |
本体 :鋼製フレーム 加圧装置 :油圧シリンダ(2段) 加圧力 :20.4tonf(200kN) |
<対応可能な試験規格>
危険物容器及び包装の検査試験基準---日本舶用品検定協会(HK)
危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示---消防法
毒物及び劇物の運搬容器に関する基準---厚生労働省
IMDG-CODE---海上輸送
ICAO Technical Instructions---航空輸送
IATA 危険物規則---航空輸送
JIS Z 1651---フレキシブルコンテナの国内規則
ISO 21898:2004---国際標準化機構
感染性廃棄物容器評価基準---日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)