IP試験
1. 試験の概要
IPコードとはInternational Protection の頭文字をとったもので、電気機械器具を対象として感電事故等を防止するため外被内の危険箇所への接近に対する保護や外被内への外来固形物(塵埃など)の侵入防止のための保護構造、水の浸入防止のための保護構造について、その保護内容及び試験方法を等級で表したものです。
屋外に設置される配電盤、信号機等は風雨に晒されるため、防水構造、防塵構造が要求されることはもちろんですが、最近では携帯電話やデジタルカメラなど身近な製品でも、防水、防塵機能が求められるようになり、製品カタログにIPX5、IP56などのIPコードを目にするようになりました。
試験規格JIS C 0920“電気機械器具の外郭による保護等級(IP コード)”及びJIS F 8007“舶用電気器具の外被の保護形式及び検査通則”はいずれも国際規格IEC 60529に準拠して改訂されています。
IPコードは記号と保護等級を表す数字の組み合わせで表示します。一桁目の数字は“第1特性数字”といい“外被内の危険箇所への接近に対する保護”及び“外被内への塵埃等の外来固形物の侵入に対する保護”の両者の保護等級を表します(両者を満足する必要があります)。二桁目の数字は“第2特性数字”といい“外被内への水の浸入に対する保護”の等級を表します。
例えば、“ⅠP56”の表示がある場合、“危険な箇所への接近に対する保護”及び“外来固形物の侵入に対する保護”がいずれも保護等級5を満足し、また“水の浸入に対する保護”が保護等級6を満足していることを表します。
第1特性数字又は第2特性数字のいずれかがXと表されている場合がありますが、その部分が保護等級の対象になっていないことを示します。
例えば、“IPX6”では防水性能に関しては保護等級6を満足していますが、防塵性能については特に規定されていないことを示します。
保護等級ごとの保護の内容と試験方法を以下に示します。
表1 危険な箇所への接近に対する保護等級
保護等級 |
保護の内容 |
試験方法 |
1 |
手の甲が危険な箇所への接近に対して保護されている。 |
直径50mmの近接プローブで試験した時、危険な箇所との間に適正空間距離が確保されていること。 |
2 |
指での危険な箇所への接近に対して保護されている。 |
直径12mm、長さ80mm関節付試験指の先端と危険な箇所との間に適正空間距離が確保されていること。 |
3 |
工具での危険な箇所への接近に対して保護されている。 |
直径2.5mmの近接プローブが侵入しないこと。 |
4 |
針金での危険な箇所への接近に対して保護されている。 |
直径1.0mmの近接プローブが侵入しないこと。 |
5 |
同上 |
同上 |
6 |
同上 |
同上 |
表2 外来固形物の侵入に対する保護等級
保護等級 |
保護の内容 |
試験方法 |
1 |
直径50mm以上の大きさの外来固形物に対して保護されている。 |
直径50mmの球形プローブの全体が開口部から侵入しないこと。(通り抜けないこと) |
2 |
直径12.5mm以上の大きさの外来固形物に対して保護されている。 |
直径12.5mmの球形プローブの全体が開口部から侵入しないこと。(通り抜けないこと) |
3 |
直径2.5mm以上の大きさの外来固形物に対して保護されている。 |
直径2.5mmのプローブが開口部から侵入しないこと。 |
4 |
直径1.0mm以上の大きさの外来固形物に対して保護されている。 |
直径1mmのプローブが開口部から侵入しないこと。 |
5 |
防じん形
(器具の所定の動作、安全性を阻害する量の塵埃の侵入がない) |
粉じん試験機内に設置し、8時間の試験の後、電気機器の所定の動作及び安全性を阻害する塵埃の侵入がないこと。 |
6 |
耐じん形
(塵埃の侵入がない) |
粉じん試験機内に設置し、8時間の試験の後、塵埃の侵入がないこと。 |
表3 水の浸入に対する保護等級
保護等級 |
保護の内容 |
試験方法 |
1 |
垂直に落下する水滴に対して保護されている。
|
1mm/分の水を200mmの高さから降り注ぐ。
試験時間は10分間。 |
2 |
15度以内で傾斜しても垂直に落下する水滴に対して保護されている。 |
3mm/分の水を200mmの高さから降り注ぐ。
試験時間は10分間。
試験品は15度傾斜させて固定。 |
3 |
垂直線から両側に60度までの散水に対して保護されている。 |
振動管による試験
垂直から±60度の範囲、1穴あたり0.07リットル/分の水量で10分間試験する。 散水ノズルによる試験
垂直か±ら60度の範囲で、10リットル/分の水量で5分間試験する。 |
4 |
あらゆる方向からの水の飛まつに対して保護されている。 |
水量及び試験時間は保護等級3の試験と同じ。
但し散水範囲は±180度 |
5 |
あらゆる方向からのノズルによる噴流に対して保護されている。 |
内径6.3mmの注水ノズルで12.5リットル/分の水量を、試験体を回転させながら最低3分間注水する。 |
6 |
あらゆる方向からの暴噴流(強力なジェット噴流)に対して保護されている。 |
内径12.5mmの注水ノズルで100リットル/分の水量を、試験体を回転させながら最低3分間注水する。※ |
7 |
水に沈めても影響が無いように保護されている。 |
水中1mに30分間浸漬する。 |
8 |
潜水状態での使用に対して保護されている。 |
試験条件は当事者間で取り決める。
但し保護等級7の試験条件よりも厳しいものとする。 |
※ 船級規格のIEC 60945の雨水試験では試験時間は30分
2. 対応規格
3. 申し込み・問い合わせ上のお願いや注意事項
試験体の特別な様式等
試験体は防じん、防水それぞれ1台用意願います。
防じん試験に使用する試験体は加工が必要となる場合があります。試験体内部を減圧する場合は、減圧するための減圧継手を接続するために、試験体にM5、 M6、M8、 M10またはPT3/8のタップを切ってください。筐体の肉厚が薄くてタップを切ることが出来い場合は、上述のサイズのおねじが通るような丸穴を開けた状態でも構いません。この場合は試験体内部にてナット止めが出来るように、工具が使用可能であるようなスペースのある場所に加工をしていただければと存じます。また、外径4mm、6mm、8mmのポリウレタンチューブにて減圧を行うことも可能です。この場合には試験品内部と外部を隔てる壁面にポリウレタンチューブを通していただき、孔とチューブの隙間を 硬化後も弾性の残る接着剤等にて埋めていただきければと存じます。
防水試験に使用する試験体はケーブルグランドが装着してあるものについては通常使用する電線を取り付けてください。長さは20cm程度で、両端を接着剤等でシールしたものが必要です。
防じん、防水試験を1台で行う場合は防じん試験に使用する試験体の加工に準じてください。